本木雅弘さん主演「おくりびと」、そして目黒蓮さん・浜辺美波さん主演の「ほどなく、お別れです」などの映画をきっかけに、葬儀屋さんという仕事に興味を持つ人が増えています。
“人の最期に寄り添う仕事”というと、少し特別な世界のように感じるかもしれませんが、実は転職先として選ぶ人も多い職業です。
葬儀屋さんは、ご遺体の搬送や安置、葬儀の準備・進行、そして葬儀後のフォローまで、遺族が安心して故人を見送れるようにサポートする専門職。
大切な人を亡くした遺族は、気が動転して何から手をつけていいかわからなくなることもあります。そんな状況でも、葬儀屋さんは段取りを整え、必要な手続きを進め、遺族が「お別れの時間」をしっかり過ごせるよう支えていきます。
葬儀屋さんの仕事内容をわかりやすく紹介
葬儀屋さんの仕事は「ご遺体を運ぶ」「式を進行する」といった表面的な部分だけではありません。実際には、遺族の気持ちに寄り添いながら、葬儀全体をトータルで支える“総合コーディネーター”のような役割を担っています。ここでは、葬儀依頼を受けてから葬儀後のフォローまで、具体的な流れに沿って仕事内容を紹介します。
葬儀依頼の受付
不幸があった際、まず最初に葬儀屋さんへ連絡が入ります。連絡元は遺族だけでなく、病院・警察・介護施設などさまざまです。
葬儀屋さんは状況を丁寧にヒアリングし、お迎えの時間を調整します。そのうえで、寝台車の手配やドライアイスの準備など、ご遺体を安全に搬送するための段取りを整えます。
ご遺体の搬送・安置
安置とは、葬儀までの間ご遺体を置いておく場所のことです。自宅で安置するケースもあれば、葬儀社の安置室や斎場を利用することもあります。葬儀屋さんは遺族の希望を確認し、適切な場所へご遺体を搬送します。
安置後は、ご遺体を清めたり、保全のための環境を整えたり、お供え物を準備したりと、細やかな作業が続きます。
お通夜・葬儀の打ち合わせと見積もり
葬儀の日程は、遺族・宗教者・火葬場・式場など、複数の関係者のスケジュールを調整して決めます。その後、遺族の希望を丁寧に聞き取り、式の規模や内容をもとに見積もりを作成します。
花の手配、遺影写真の準備、料理や香典返しの手配など、必要な手続きは多岐にわたります。遺族が迷わないよう、選択肢を提示しながら進めていくのも葬儀屋さんの大切な役割です。
お通夜の設営・運営
お通夜では、会場の設営、納棺、司会進行などを担当します。式が始まる前に、祭壇の準備や席の配置、照明・音響のチェックなど、細かい部分まで整えておく必要があります。
お通夜が終わった後は、翌日の葬儀に向けて最終確認を行い、スムーズに式が進むよう準備を整えます。
葬儀・告別式の運営
葬儀当日は、複数人で役割分担しながら進行します。会場設営、弔問客の案内、司会進行、宗教者との連携など、式全体を滞りなく進めるための動きが求められます。
出棺・火葬・葬儀後のサポート
葬儀・告別式が終わると、出棺して火葬場へ向かいます。火葬場では案内役を務め、火葬中には会場の片付けや精進落としの準備を進めます。
精進落としが終わる頃には、遺影やご遺骨を持ち帰れるよう整え、遺族を見送ります。その後、遺族宅でご遺骨の安置を行い、事務所に戻って事務作業をして一連の流れが完了します。
アフターフォロー
葬儀屋さんの仕事は、葬儀が終わったら終了…ではありません。仏壇・お墓・法要の相談、喪中はがきの作成、相続に関する案内など、葬儀後のサポートを行うことも多いです。
ただし、アフターフォローの内容は葬儀社によって異なり、専門スタッフがいる会社もあれば、最低限のサポートにとどまる会社もあります。遺族が安心して日常に戻れるよう、必要に応じて寄り添う姿勢が求められます。
葬儀屋さんに必要な資格はある?
葬儀屋さんの仕事は専門性が高いイメージがありますが、実は“絶対に必要な国家資格”はありません。そのため、未経験からでも挑戦しやすい職業として人気があります。ただし、業務の特性上、持っておくと便利な資格や、キャリアアップにつながる民間資格はいくつか存在します。
必須資格は「普通自動車免許」
葬儀屋さんの仕事に必須の資格はありませんが、ほとんどの求人で普通自動車免許が必須となっています。ご遺体の搬送や遺族との打ち合わせで車を使う場面が多く、移動がスムーズにできることが求められるためです。
また、霊柩車や寝台車の運転を担当することもあるため、運転に慣れていると仕事がしやすくなります。なお、AT限定でも問題ないケースがほとんどなので、特別な免許を取り直す必要はありません。
持っていると有利な民間資格
必須ではありませんが、資格を持っていると仕事の幅が広がったり、転職時のアピールポイントになったりします。葬儀の知識だけでなく、遺族の心のケアや仏事の知識など、専門性を高められる資格が多いのが特徴です。
グリーフケアアドバイザー
大切な人を亡くした遺族の悲しみや心の反応を理解し、寄り添うための知識を学べる資格です。
実務経験がなくても取得できるため、未経験から葬儀業界に挑戦したい人にも人気があります。
遺族対応の質が上がるため、現場でも重宝される資格です。
仏事コーディネーター
仏壇・仏具・法事など、仏教に関する幅広い知識を証明できる資格です。葬儀後のアフターフォローを行う葬儀社では特に役立ち、遺族からの相談に自信を持って対応できるようになります。
お墓ディレクター
お墓の歴史や文化、種類、石材の知識、法律上の手続きなど、専門的な内容を学ぶ資格です。
お墓に関する相談は葬儀後に多く寄せられるため、取得しておくと遺族のサポート範囲が広がります。
終活カウンセラー
生前整理やエンディングノートの書き方、葬儀の準備など、終活全般の知識を持つことを証明する資格です。実務経験は不要で、初級から段階的に学べるため、葬儀業界を目指す人の入門資格としても人気があります。生前相談を受ける機会が多い葬儀社では、特に活かしやすい資格です。
葬儀屋さんのやりがいとは?
葬儀屋さんの仕事は、体力的にも精神的にもハードな場面が多い一方で、「この仕事でしか味わえない特別なやりがい」がたくさんあります。人生の最期という大切な瞬間に立ち会い、遺族の気持ちに寄り添いながらサポートするからこそ得られる達成感や感謝の言葉は、他の仕事ではなかなか経験できません。
遺族から感謝される
精神的にも体力的にも大変な仕事ですが、遺族の気持ちに寄り添いながら丁寧にサポートすることで、「本当に助かりました」「あなたが担当でよかった」といった言葉をいただくことがあります。悲しみの中にいる遺族にとって、葬儀屋さんの存在は大きな支えになることも多く、その感謝の言葉が仕事の励みになるという声は非常に多いです。
無事に見送りを終えたときの達成感
葬儀はスピード感が求められ、短期間で多くの準備を整える必要があります。プレッシャーのかかる場面もありますが、すべての段取りがうまくいき、故人を無事に見送れた瞬間には大きな達成感が生まれます。「自分の仕事が誰かの大切な時間を支えた」という実感を得られるのは、この仕事ならではです。
人の役に立てる仕事
葬儀屋さんは、人生の最期という非常に重要な場面に立ち会い、遺族の心の支えになる仕事です。
悲しみの中にいる人の力になれるという点で、「誰かの役に立ちたい」「人を助ける仕事がしたい」という気持ちを持つ人にはぴったりの職業です。直接的に「人のためになっている」と感じられる瞬間が多いのも魅力のひとつです。
チームで仕事をやり遂げる喜び
葬儀は一人で完結する仕事ではなく、搬送・設営・司会・案内など、複数のスタッフが連携して進めるチームプレーです。仲間と息を合わせて式を成功させたときの一体感や達成感は、他の仕事ではなかなか味わえません。「チームで何かを成し遂げるのが好き」という人にとっては、大きなやりがいにつながります。
葬儀屋さんの平均年収はどれくらい?
葬儀屋さんの収入は、働く地域や会社の規模、担当する業務内容によって幅がありますが、全体の傾向を知っておくと転職活動の参考になります。
平均年収は約380万円
厚生労働省によると、葬儀屋さんの平均年収は約380万円。月給はおよそ25万円、年間の賞与や各種手当を合わせると約45万円ほどになります。ただし、この数字は会社の規模や担当する業務量、勤務形態によって大きく変わることがあります。
夜勤・休日出勤で収入が上がるケースも
葬儀屋さんは24時間体制で動く仕事のため、夜間の搬送や休日の葬儀対応が発生することも珍しくありません。夜勤手当や休日出勤手当がしっかり支給される会社では、その分年収が平均より高くなるケースもあります。
インセンティブ制で収入アップも可能
インセンティブ制を採用している葬儀社もあり、担当した葬儀の見積もり金額や受注件数に応じて給与が上がる仕組みを導入しているところもあります。営業力や提案力が収入に直結するため、「頑張った分だけ稼ぎたい」というタイプの人には向いている環境です。
働き方次第で収入の伸びしろがある
全体として、葬儀屋さんの年収は「安定しつつも、働き方次第で収入アップも狙える」という特徴があります。自分がどんな働き方をしたいのか、どこまで対応できるのかを考えながら企業選びをすると、より納得のいく転職ができるでしょう。
葬儀屋さんの大変なところとは?
葬儀屋さんはやりがいの大きい仕事ですが、その分、日常的に大変だと感じる場面も少なくありません。仕事内容の特性上、体力面・精神面・生活リズムなど、さまざまな負担がかかることがあります。
精神的な負担が大きい場面もある
葬儀屋さんは、悲しみの中にいる遺族と向き合う仕事です。突然の別れに動揺している方や、感情が不安定になっている方と接することもあり、精神的な気遣いが欠かせません。感情移入しすぎてしまうと自分自身が疲れてしまうため、適度な距離感を保つスキルも必要です。
体力を使う作業が多い
ご遺体の搬送、会場設営、祭壇の準備など、実は体力を使う場面が多い仕事です。重いものを運ぶこともあり、式場の準備や片付けで長時間動き回ることもあります。デスクワーク中心の仕事とは違い、身体を動かすことが苦にならない人に向いています。
ミスが許されない緊張感がある
葬儀は「人生で一度きり」の大切な儀式です。名前の読み間違い、段取りの遅れ、式の進行ミスなど、些細なミスでも遺族の心に深く残ってしまう可能性があります。そのため、常に細かい部分まで気を配りながら仕事を進める必要があり、緊張感のある場面も多いです。
まとめ
葬儀屋さんは、ご遺体の搬送や式の進行だけでなく、遺族の気持ちに寄り添いながら葬儀全体を支える専門職です。24時間体制で動くこともあり、決して楽な仕事ではありませんが、その分、遺族から深く感謝されたり、チームで式を成功させたときの達成感を味わえたりと、大きなやりがいを感じられる場面が多くあります。また、特別な資格がなくても挑戦でき、経験を積むほど専門性が高まり、キャリアアップの道も広がります。
「人の役に立ちたい」「誰かの大切な時間を支えたい」という思いを持つ人にとって、葬儀屋さんは非常に魅力的な選択肢です。転職を考えている方は、ぜひ一度、葬儀業界の仕事に目を向けてみてください。あなたの優しさや気配りが、誰かの心を支える大きな力になるかもしれません。


